第二話 「運命」




[ 組体操 扇(おうぎ) ]
写真と本文は関係ありません

 耳をいただいた方々。ふたりめ「KAORU」さん



 たしかローグの彼女とも仲良くプレイしていた。彼女の名前は大文字だっ

たか小文字だったか、それとも混じっていたか? おもいだせない。 

 昨日のことなのに、記憶があいまいになるくらい動揺している。気の弱い

僕には、PKは向いてないみたいだ。なんかスンゲー悪いことしているみた

い。 

 冒険の途中、彼女は、ちょっとしたミスで敵に殺された。彼女は、タウン

から再スタートして、ちらばっていたアイテムを集めだした。 

 僕は強盗としてはマヌケなことに、彼女のアイテムはおろか所持金にも手

をつけずに見守っていた。さすがに、生まれたままの姿でやってきた仲間(

その時点では)を殺すことはためらった。できない。でも、逃げちゃだめだ

逃げちゃだめだ逃げちゃ・・・ 

 と、シンちゃんはいっていた僕は、「マト」が混戦を殲滅し、体力の回復

もせずに(たぶんアイテムの整理や、ほっとした一瞬なんだろう)に襲いか

かった。 

 僕自身の武器もスペルもたいしたことなく、レベルは、僕がひとつ上だっ

たかな。8アクションほどで、ようやく殺すことができた。 

 しかし、丸裸だったさっきの機会をのがすべきではなかった。 

 この殺人は、あまりに不自然だった。1発2発の誤射でなく、1分ほどの

戦いだったので、僕の豹変(というか真意)を、彼女にさとられてしまった。

彼女は、間髪いれずにLEFT。 

 また耳だけが残った。 

 実は、僕は、彼女を安心させスキを誘発するため、リングやBOOKは、

ゆずっていた。とてもジェントリーにプレイしていた。それは前回も同じだ。

LowLevelだったし、彼女はアイテムを買った直後らしく、強奪金も

100ゴールドなかったよ。 

 だから、耳だけが残ったこれらのPKは、卑怯かつ迷惑なワリに、僕自身

もトクがなかった。なにも奪えなかったからだ。 

 むしろ足が出た。装備のリペアもできない僕のフトコロ事情だった。 

 そういえば、僕がPKされたときも、すぐLEFTしたら、そっくり所持

品は残っていたっけ(お金が半分なくなるそうだけど)。アイテムの奪いか

たを知らなかったので、どうすれば、相手のアイテムを全部奪えるのか考え

たが、わからなかった。「じょうずに強盗や人殺しをする方法を教えてくだ

さい」っても、誰も教えてくれないしね、ふつー。

 おもわず、まっとうな道を歩いて、強い人にアイテムを恵んでもらうよう

な善良な人生のほうがリコウに思えて、もうやめようかな、とマジ思った。 

 よく考えてみたら、僕、初心者じゃん。 



 つづく 


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